2018年9月2日日曜日

アミダイトの分解反応〜加水分解の先

 核酸オリゴの合成でアミダイトの溶液には、モレキュラーシーブスを入れる派?入れない派?
私は入れる派です。しかもできればペレットを使いたいです。パック詰めの粉のも購入できますが、高い!。ペレットからも粉がでて合成機に吸い込まれるのが嫌ですが、チューブにフィルターをつける派?つけない派?いろいろありますね。
 アミダイトの乾燥があまいと、アクチベーターと混ぜた瞬間に水と反応し、アミダイトが縮合前に加水分解してしまったり、そもそもアミダイト自体がアセトニトリル溶液中で、徐々に加水分解することが考えられますね。加水分解だけが問題となるならば、系中の水が消費されればそれで終わりなのですが、その先の分解反応が実はあんまり知られていません。会社の若手とのディスカッションで、昔読んだ論文のことを思い出しました。
 2004年のNucleosides, Nucleotides & Nucleic AcidsでIsis(現Ionis)のグループがアミダイトの分解反応について報告しています。DNAの標準的なアミダイトをアセトニトリルに溶解させ、経時変化をHPLCで分析しています。0.2 MのG(ibu)のアミダイトの溶液では、純度99%のアミダイトが10日で91.5%まで下がるとのことです。他のA、C、Tではそんなに分解しません。

 アミダイトが加水分解するとCE-H-ホスホネートが生成します。加水分解だけではココで終わりですが、この加水分解で副生するジイソプロピルアミンやアミダイト自体の塩基性で、H-ホスホネートのシアノエチル基がbeta-脱離し、H-ホスホネートモノエステルと、アクリロニトリルが生成します。一旦アクリロニトリルが生成するとアミダイトの分解反応は別のメカニズムで進行し始めます。アミダイトのリン原子がマイケル付加でアクリロニトリル付加体となり、この付加体からO-(2-シアノエチル)部分でさらにbeta-脱離が進行し、アクリロニトリルがまた生成します。つまりアクリロニトリルがアミダイトの分解を触媒し続けるということを示しています。
 この論文では、モレキュラーシーブスを共存させると分解反応は、抑えられるとも報告しています。
 リン周りの立体障害の少ないDNAのアミダイトの話です。より立体障害のあるRNAやLNAなどでは、もう少し安定なのかもしれません。(縮合効率が悪いですし、反応効率も違いますよね。)