2023年2月7日火曜日

DMTr基とPix基からアセタール型の保護基を思い出す。

ご無沙汰ぶりです、更新できておらずすみません。先日あるオリゴのCROの若手研究者の方とお話する機会があり、更新しないのですかと聞かれまして、思い腰を上げて最近読んだ古い論文紹介をさせて頂きます。

最近、ピクシル(9-phenylxanthen-9-yl, Pix)基についての論文を読み直す機会があり、そういえば弱酸性条件で脱保護するRNAの2'-水酸基の保護基と組み合わせて、5'-水酸基の保護基として活用されていたなと思いだしました。Pix基は、DMTr基と同じ酸性条件化除去できる保護基として開発されました(Chattopadhyaya_1978_ChemComm)。この論文で、Pix基はDMTr基よりも迅速に脱保護が行なえると報告しています。


この当時、RNAの2'-水酸基の保護基としてマイルドな酸性条件下除去が可能なアセタール型の保護基が盛んに研究されていたこともあって、この年代の論文ではよく登場します。畑先生のグループ(Tanimura_1988_Tetrahedron Lett.)は、RNAの2'-水酸基をテトラヒドロピラニル(tetrahydropyran-4-yl, THP)基で保護し、5'-水酸基をPix基とその類縁体の9-(4-methoxyphenyl)xanthen-9yl(Mox)基で保護されたアミダイトを報告しています。核酸塩基毎のトリチル系保護基の脱保護速度*を考慮して、A/GはPix基、C/UはMox基を導入して、脱Pix基が迅速に行なえるように最適化が図られ、10mer -13merのRNAの合成に成功しています。

この後もさまざまなアセタール型の保護基として、電子吸引性の置換基を導入したもの(Sakatsume_1991_Tetrahedorn, Matysiak_1998_Helv. Chim. Acta)や、強酸性条件でアセタール型保護基の一部に導入したピペリジンがプロトン化し電子吸引性効果を示すl-(2-chloro-4-tolyl)-4-methoxypiperidin-4(Ctmp)基(Reese_1986_TetrahedronLett)、1-(2-fluoropheny1)-4-methoxypiperidin-4-yl(Fpmp)基(Reese_1988_JCS_Perkin1)などが合成されたのですが、やはり酸性条件で除去するトリチル系保護基との併用はうまくいかず、シリル系のTBMDSや、TOMなどが主流となりました。

今回、Pix基について論文調査したところ、紫外光(254nm)で脱保護できるそうです。核酸の場合は、塩基部の吸収があるので、254では実験されておらず300 nmの波長でかなりの時間の光照射が必要だそうです(Misetic_1998_TetrahedronLett)。それにしても、読んでいる論文がclassicで本ブログにピッタリですね。

*dGiBu>dABz>dCBz>dT:DMTr基の脱保護速度は核酸塩基の保護基によっても異なるとは思いますが、この順序で報告があります。合成機のオレンジ色の抜ける速度もこのような順でしょうか。(Seliger_2001_Curr Protoc Nucleic Acid Chem)