2017年10月1日日曜日

キラルなホスホロチオエート

東京理科大学の和田猛先生の技術をつかった核酸医薬ベンチャーWave Lifescienceからキラルホスホロチオエートをもちいたアンチセンスオリゴの論文がNature Biotechnologyでていましたね。
Iionis pharma. のミポミルセン(2'-MOE, 20 mer, gapmer)の19のホスホロチオエート(PS)結合の立体を制御し、安定性やKD活性などを比較し、PS結合の立体制御されたアンチセンスオリゴの優位性を述べています。

Chemistryとしては、オキサザホスホリジン法が一歩すすんで成熟したなと思いました。
和田先生、岩本先生らは、2009年のAngew Chem. でオキサザホスホリジン法を用いたH-ホスホネートDNAの合成を報告しており、不斉補助基を酸性条件下除去することでキラルなH-ホスホロチオエートの合成に成功しています。得られたH-ホスホネートは硫化することによってキラルなホスホロチオエートへ誘導化することができます。

今回の合成法では、中間体の亜リン酸トリエステルの状態でキャプ化し、引き続きS-シアノエチル メチルチオスルフォネートを用いてS-シアノエチルホスホロチオエートトリエステル化と同時に不斉補助基の除去を行なっています。
この不斉補助基除去反応が硫黄原子導入反応と同時に進行するためには、オキサザホスホリジン法によるH-ホスホネート合成のために最適化されたalpha位がPh, Meで置換されたプロリノールの構造があればこそ達成できたといえます。
この反応によって亜リン酸トリエステルに直接硫化(S-シアノエチルではなく、単なる硫黄原子の導入反応)をした場合には、不斉補助基の除去を考慮にいれると、イミダゾールトリフルオロ酢酸でキャップ化を行なう必要がある上、長時間のアンモニア処理が必要という課題(岡ら_2009_OrgLett)も同時に解決でき、RNAのキラルホスホロチオエートの実用的合成にも応用ができると期待できる。






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