2017年3月29日水曜日

Activator 活性化剤

核酸オリゴマー合成の重要な要素の一つですね。
アミダイト法(亜リン酸トリエステル法)になくてはならないアクティベーター。1H-tetrazoleがいまだに広く使われているのではないかと思います。

個人的に、アクティベーター選択で大切なのは、酸性度、溶解性、爆発性、求核性の有無だと思っています。
酸性度: 活性化能に大きく関わるので大切です。一時期、ジクロロ酢酸(DCA)をアミダイトの等量以下で用いることができるという研究もありましたが、最近は見かけません。酸性度が高すぎると、DMTr基が落ちて、オーバーカップリングのリスクがあります!。
溶解性: 合成機のメンテナンスに大きく関わります。配管がつまる!昔のABIの装置もTETが詰まったりして、送液不良が起きたりしましたね。このあたりから、使用後は、配管をすべてアセトニトリルに置換しましょうってラボルールができたように思います。わたしは、MerMade192BTTをつかっていましたが、配管の先からBTTが氷柱のようになることがありました。oligopilot 100で大きめのスケールで合成するときに、高濃度の溶液が作成できないのはすこし困るかもしれません。
爆発性: 固体での扱いがすこし怖いですよね。溶液なら安心かな。

求核性が無いこと: オキサザホスホリジン法でキラルなホスファイト合成を行なう際、重要です。

一般的な、アゾール類のアクティベータのデータは、手持ちのSigma(Proligo)Activator42のプレゼン資料が分かりやすいので引用すると次の表になります。

テトラゾール(TET)は、固体のまま飛行機に積めません。化合物1分子あたりに窒素含量がおおすぎます。ちなみに自動車のエアバックに用いられているのは、5-aminotetrazoleです。
テトラゾール5位にエチルチオ(ETT)、ベンジルチオ(BTT)を導入すると酸性度がすこし上がります。ETTは溶解性も高いので使いやすいですね、爆発のリスクはすこし残ります。ニトロフェニルテトラゾール(NP-TET)は溶けにくいです。大学のときに先輩が2-nitrobenzylアルコールの誘導体のアミダイトの縮合が悪く、NP-TETを使っていたように思いますが、かれこれ20年ほど前。その時代では最新のアクティベーターだったのかもしれません。4,5-ジシアノイミダゾール(DCI)は、かなり高濃度でつかえるので好きなアクティベーターです。ジアミダイトからアミダイトを合成する際にもよく用いられます。それからプロリゴのActivator42ですね。上述の欠点を補った、高級テトラゾールです。

今回はこの辺で。アクチベーターってまだまだ奥が深いですね。

2017年3月3日金曜日

LNA & 2',4'-BNA その1

X-tal structure of LNA-U (CCDC number: 1231048)
20周年おめでとうございます❗LNAの特許が切れたら、ますます核酸医薬が盛り上がるのか期待で一杯です。Wengel研にポスドクでお世話になっていたこともあるし、日本に帰ってからもBNANCを合成したりと、大学をでてから大分お世話になっている化合物です。いろんなところで話題になってますよね。今西先生、小比賀先生に配慮してBNAと併記するのが多いのですが、LNAと呼ぶのが一般化していると思います。

基本的には、完全に独立した研究で行なわれていたとされています。どちらが先に合成したのかは実験ノートを見ないと分かりません。論文発表は、今西先生の方が先でした。Tetrahedron Letters 1997 (Recieved 5/Sep., Accepted 3/Oct.)に掲載されています。小比賀先生が筆頭著者で、今西先生が責任著者でした。ウリジンとシチジンのDMTr体の合成と、結晶構造が出ています。ぼくの憶測ですが、この発表を見たWengel先生は急いでChemCommに投稿されたのだと思います (Recieved 28/Nov-97)。それからすぐフルペーパーを出しておられます。(Recieved 31/Dec-97)。デンマークは、国旗に十字架がありますし、クリスマスの休暇をしっかり取るお国がらなのに、それを返上してフルペーパーを投稿するくらい、必死で仕事をまとめたのではと思います。今西先生のほうはゆっくりしていて、次の4月にTmCDスペクトルのデータを出しておられます。結晶構造にしろ、CDスペクトルにしろ、合成したものの評価をしっかりやる印象がありますね。南デンマーク大にCDスペクトルを測定できる装置がきたのは、私がいたときでしたので研究設備は日本の大学の方がかなり恵まれています。

その後は、
Wengel研では、amino-LNA, thio-LNA, α-L-LNA, など
今西先生、小比賀先生は、ENA, BNACOC, BNANCなどなど
より高機能な誘導体が合成されてます。しかしながら、オリジナルのインパクトはすごいですよね。
個人的には、α-L-LNAも好きです。

LNA/BNAのシリーズは書くことがいっぱいあるのでまたの機会に。
2017.3.3