2020年2月5日水曜日

Mila's Mir⭐️cle Foundation

 n = 1の臨床試験が行われているアンチセンス薬ミラセン(Milasen)。Milaちゃんという、バッテン病の患者のためのエキソンスキッピング型MOEのASO薬です。Milaちゃんのお母さんのトランスポゾン変異が原因で、この遺伝子変異によるバッテン病患者は、世界中でMilaちゃんだけ。Milasenは患者1人のための究極のテイラーメイド医薬品です。
 トランスポゾン変異によりMFSD8遺伝子に挿入された核酸の塩基配列が、スプライシング産物(RNA)に組み込まれ、終止コドン配列(AUG)が挿入されることにより、正常なタンパク質翻訳が行なわれないことが、Milaちゃんの病気の原因です。Milasenは、pre-mRNAのトランスポゾン挿入部分に相補的なASOであり、ASOの投与で挿入配列がスキップされた成熟mRNAが増加、正常なタンパク質が生成されます。
 ASOを用いた治療が計画されてから、実際に投与されるまで10ヶ月、文献上ではたった7つのASOから臨床化合物が選択されました(Kim_2019_NEJM)。承認薬ヌシネルセンと類似のスプライシング制御薬である点、Chemistry(MOE-PSオリゴ)及び投与経路(髄腔内投与)もヌシネルセンと同じ、患者の重篤性、希少性からFDAが臨床試験を許可したと言われています。
 ご両親は、Mila's Miracle Foundationという基金を設立し、300万ドルを集めこの医薬品研究資金に使ったとされていますが、どう考えても300万ドルでは足りないです。この研究に携わった研究者、Ionisの協力なしではなし得なかったプロジェクトです。
 このスピード感、対象疾患が遺伝子変異に対する点がまさしく核酸医薬品らしいと思いました。n = 1の臨床試験での医薬品開発は、医薬品ビジネスとしては成立しづらいと思います。しかし確立されたプラットフォームと、公的な資金やリソースの助けがあれば、「苦しむ患者に1年足らずで投与される薬剤が創生される時代」がそこまできていると感じさせられました。
 Milasenについては、愛し野内科クリニックの愛し野だよりで日本語で詳しくご説明されています。

1 件のコメント:

  1. 日経バイオテクの久保田さんの記事が出てますね。
    https://bio.nikkeibp.co.jp/atcl/column/16/100400036/020800007/

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