2020年2月12日水曜日

TBAF (テトラブチルアンモニウムフルオリド)

バタバタ忙しくて、更新できてなくてすみません。仕事に追われてなかなか時間が取れなかったです。TBAFについて、調べ直しする必要があったので、せっかくなのでまとめてみました。 RNA化学合成後の2'-TBDMS (TBS)基の脱保護には、TEA·3HFが広く用いられています。少し前(だいぶ前?) は、TBAF (tetrabutylammonium fluoride)が用いられていました。TBAFの含水量によって、RNAの脱保護時の脱シリル反応が遅くなる(進行しなくなる)との報告(Hogrefe_1993_NAR)があり、含水量による反応の再現性が得られにくいので、TEA·3HF (Westmanu_1994_NAR)が使いやすいということになってきたのかと思います。 さてTBAFですが、3水和物〜4水和物くらいのものが固体の試薬として市販されています。かなりの潮解性です。含水量を気にして、しっかりとシールされている1 M TBAF/THFの溶液を何度も購入しました。そのほかTHF溶液にモレキュラーシーブを入れたりして・・・(今から思うと過酸化物怖い)。 TBAFの水和水ですが、試薬の安定性に極めて重要な役割をしていて、この水和水を除去すると、試薬が分解してしまいます。TBAFの水和水を除くため、脱水のアセトニトリルを使って、エバポレータで共沸脱水したことがあります。すると、23回の共沸脱水操作(バス温40°C以下だったと)で、試薬が着色、分解してしまいました。後から調べたら文献(Sharma_1983_JOC)でも報告があり、加温、減圧乾燥で、ホフマン分解が進行してしまい、トリブチルアミン、HF1-ブテンが生成するとの報告がありました。ホフマン分解のメカニズムは、4級アンモニウムのβ-位の水素がF-で引き抜かれ、レトロマイケルで進行するのですが、このように、Naked F-の水素結合アクセプター性は、共存する水や、溶媒などにより大きく影響を受けるということがわかります。TBAFは、中性だとか塩基性だとか色々言われていますが、溶媒和によってその水素結合アクセプター性が変化するので、単純な中性、塩基性の議論で済まないと思っています。 ほかのブログさん(たゆまずとも沈まずー有機化学のあれこれ)で、無水TBAFの紹介がされていますが、無水TBAFは、hexafluorobenzenetetrabutylammonium cyanideから、低温で合成できるとの報告があり(Haoran_2005_JACS)、その反応有用性も報告されています。また、Naked F-については、窒素より原子半径が大きい、ホスホニウムカチオンとの組み合わせで、テトラメチルホスホニウムフルオリドの報告がありますが、アセトニトリルの水素原子を引き抜いてしまうほどその水素結合アクセプター性はかなり強いです(Hohenstein_2010_ZEITSCHRIFT FÜR NATURFORSCHUNG B)。 今回の機会に、TBAFのことを調べてみると、TBAF(tBuOH)4 結晶性が高く、潮解性が低く、TBAF(H2O)xから合成でき使いやすいとの報告(Kim_2008_Angew)や、pinacol錯体が販売されていたり、実験していない間に化学が進歩している様です。使ってみたい試薬たち。 RNAの脱保護だけではなく、通常の有機合成でも、個人的にシリル系保護基の脱保護には、TEA·3HFがオススメです、TBAFのテトラブチルアンモニウムカチオンが精製時に厄介ですよね。

0 件のコメント:

コメントを投稿