2017年11月29日水曜日

第9回核酸医薬レギュラトリーサイエンスシンポジウム開催 2018/01/29

核酸医薬のRSシンポジウムが開催されますね。
今回はデータベースがメインのようです。参加費無料で、先着ですお早めに。

核酸医薬創出に資する DNA/RNA データベース整備の現状と課題
日 時:平成 30 年 1 月 29 日(月)13:30-16:40(13 時開場)
場 所:ニッショーホール(東京・虎の門)
参加費:無料, 定員 150 人(先着順) 

2017年11月25日土曜日

日本核酸化学会誌創刊号エッセイを読んで

核酸化学会の設立で、学会誌が発行されました。
創刊号に掲載されている、先生方のエッセイ楽しく読ませていただきました。学会を引っ張って行かれる教授の先生方が執筆されておりますが、日本の核酸化学の歴史を感じるエッセイでした。
とくに教授の先生方の若い時代に、当時の先生方にカワイガラレタ話がイニシャルで赤裸々に語られていました。登場される先生方をエッセイの登場順に箇条書きすると

N大H先生
T工大S先生
H大M先生
筑波大K助教授
東工大S助教授やO助教授
東工大H先生
岡山大H先生
京工繊M先生

分かる方には分かるとおもいます。私もお世話になった先生が登場し懐かしく思いました。
大学の枠を越えた先輩からのカワイガリも脈々と受け継がれて繋がっていく、そんな学会であってほしいとおもいました。





2017年11月7日火曜日

Wave Lifescience の新製造施設序幕

東京理科大の和田猛先生のキラルなチオエートの立体選択的合成法に基づいたベンチャーであるWave Lifescienceの新製造施設がオープンしました。イケイケどんどん、破竹の勢いで成長していますね。将来が楽しみです。

Waveに限らず、アメリカのバイオベンチャーは自社の技術を最大化するため、他社の追随を許さないため、投資のスピードが早いですね。
ベンチャーキャピタリストは、投資した技術が"使えない"ので投資に失敗するのは仕方ないが、資本投下が足りなくて事業に失敗したと言われたくないそうです。こうして資本をどんどん投下して、技術をブラッシュアップして、他社の追随を許さない状態にしてから資金を回収するのだそうです。株はSBIで買えるみたいですね。

#ホスホロチオエート#バイオベンチャー#投資
#phoshorothioate#bio-venture#investment



日本核酸化学会第一回年会〜第44回核酸化学シンポジウム

11月になって木々が色づきましたね。朝晩はひんやりですね。
ところで、来週13日から3日間東京理科大の葛飾キャンパスで日本核酸化学会第一回年会兼第44回核酸化学シンポジウムが開催されますね。私も参加させていただきます。みなさまの最新の研究に触れるのが楽しみです。ひっそりこのブログを見ていただいている方で、気付かれたらお声かけください。懇親会も参加します。わたしが個人的に面白いと感じた研究は、本ブログでアップしたいと思っています。

集合写真を追記しました。



2017年10月1日日曜日

キラルなホスホロチオエート

東京理科大学の和田猛先生の技術をつかった核酸医薬ベンチャーWave Lifescienceからキラルホスホロチオエートをもちいたアンチセンスオリゴの論文がNature Biotechnologyでていましたね。
Iionis pharma. のミポミルセン(2'-MOE, 20 mer, gapmer)の19のホスホロチオエート(PS)結合の立体を制御し、安定性やKD活性などを比較し、PS結合の立体制御されたアンチセンスオリゴの優位性を述べています。

Chemistryとしては、オキサザホスホリジン法が一歩すすんで成熟したなと思いました。
和田先生、岩本先生らは、2009年のAngew Chem. でオキサザホスホリジン法を用いたH-ホスホネートDNAの合成を報告しており、不斉補助基を酸性条件下除去することでキラルなH-ホスホロチオエートの合成に成功しています。得られたH-ホスホネートは硫化することによってキラルなホスホロチオエートへ誘導化することができます。

今回の合成法では、中間体の亜リン酸トリエステルの状態でキャプ化し、引き続きS-シアノエチル メチルチオスルフォネートを用いてS-シアノエチルホスホロチオエートトリエステル化と同時に不斉補助基の除去を行なっています。
この不斉補助基除去反応が硫黄原子導入反応と同時に進行するためには、オキサザホスホリジン法によるH-ホスホネート合成のために最適化されたalpha位がPh, Meで置換されたプロリノールの構造があればこそ達成できたといえます。
この反応によって亜リン酸トリエステルに直接硫化(S-シアノエチルではなく、単なる硫黄原子の導入反応)をした場合には、不斉補助基の除去を考慮にいれると、イミダゾールトリフルオロ酢酸でキャップ化を行なう必要がある上、長時間のアンモニア処理が必要という課題(岡ら_2009_OrgLett)も同時に解決でき、RNAのキラルホスホロチオエートの実用的合成にも応用ができると期待できる。






2017年7月12日水曜日

スピンラザ(ヌシレルセン)承認

北海道では、核酸医薬学会が開催されていますね。私は参加しませんが、7月の北海道はいい気候でしょうね。

核酸医薬が日本で初めて承認されましたね。嬉しいことです。SMA(脊髄性筋委縮症)という家族性の疾患に対するアンチセンスオリゴ(ASO)です。この疾患は、常染色体の劣性遺伝(Autosomal Resessive)であり、両親共がキャリアの子供の25%が発症する疾患です。SMAの患者さんはSMN1(Survival of Motor Neuron 1)の遺伝子の欠落によりSMNタンパク質を十分に産生することができません。SMNは運動ニューロンを維持するために必要とされるため、このタンパク質の欠損により、体に力が入らない状態になるとのこと。重症型の場合は、乳幼児に発症し2歳までにほとんどが死亡する。
SMN1の欠損を補うためにスピンラザは、スプライシング制御型のASOを用いています。SMN1類似遺伝子であるSMN2のスプライシングを変えることによってタンパク産生を亢進させています。具体的にASOは、イントロンに結合するスプライシングサイレンサーをブロックすることによって、エキソン7をmRNAへ導入しmRNAの合成を完成させ、タンパク質の産生へと導きます。またこのASOは、2'-O-(2-methoxyethy)(MOE)を用いたホスホロチオエートからなり、髄腔内投与されています。
乳幼児に髄腔内投与は手技の難易度が高いとのことですが、重篤な疾患の患者さんが救われるのは嬉しいことです。

現状の核酸医薬は家族性疾患をターゲットとしているものばかりに感じますが、人間ドックのメニューにゲノム情報を読むような未来がくるならば、個々のcommon diseaseも結局家族性ってことになるのかもしれません。



2017年3月29日水曜日

Activator 活性化剤

核酸オリゴマー合成の重要な要素の一つですね。
アミダイト法(亜リン酸トリエステル法)になくてはならないアクティベーター。1H-tetrazoleがいまだに広く使われているのではないかと思います。

個人的に、アクティベーター選択で大切なのは、酸性度、溶解性、爆発性、求核性の有無だと思っています。
酸性度: 活性化能に大きく関わるので大切です。一時期、ジクロロ酢酸(DCA)をアミダイトの等量以下で用いることができるという研究もありましたが、最近は見かけません。酸性度が高すぎると、DMTr基が落ちて、オーバーカップリングのリスクがあります!。
溶解性: 合成機のメンテナンスに大きく関わります。配管がつまる!昔のABIの装置もTETが詰まったりして、送液不良が起きたりしましたね。このあたりから、使用後は、配管をすべてアセトニトリルに置換しましょうってラボルールができたように思います。わたしは、MerMade192BTTをつかっていましたが、配管の先からBTTが氷柱のようになることがありました。oligopilot 100で大きめのスケールで合成するときに、高濃度の溶液が作成できないのはすこし困るかもしれません。
爆発性: 固体での扱いがすこし怖いですよね。溶液なら安心かな。

求核性が無いこと: オキサザホスホリジン法でキラルなホスファイト合成を行なう際、重要です。

一般的な、アゾール類のアクティベータのデータは、手持ちのSigma(Proligo)Activator42のプレゼン資料が分かりやすいので引用すると次の表になります。

テトラゾール(TET)は、固体のまま飛行機に積めません。化合物1分子あたりに窒素含量がおおすぎます。ちなみに自動車のエアバックに用いられているのは、5-aminotetrazoleです。
テトラゾール5位にエチルチオ(ETT)、ベンジルチオ(BTT)を導入すると酸性度がすこし上がります。ETTは溶解性も高いので使いやすいですね、爆発のリスクはすこし残ります。ニトロフェニルテトラゾール(NP-TET)は溶けにくいです。大学のときに先輩が2-nitrobenzylアルコールの誘導体のアミダイトの縮合が悪く、NP-TETを使っていたように思いますが、かれこれ20年ほど前。その時代では最新のアクティベーターだったのかもしれません。4,5-ジシアノイミダゾール(DCI)は、かなり高濃度でつかえるので好きなアクティベーターです。ジアミダイトからアミダイトを合成する際にもよく用いられます。それからプロリゴのActivator42ですね。上述の欠点を補った、高級テトラゾールです。

今回はこの辺で。アクチベーターってまだまだ奥が深いですね。

2017年3月3日金曜日

LNA & 2',4'-BNA その1

X-tal structure of LNA-U (CCDC number: 1231048)
20周年おめでとうございます❗LNAの特許が切れたら、ますます核酸医薬が盛り上がるのか期待で一杯です。Wengel研にポスドクでお世話になっていたこともあるし、日本に帰ってからもBNANCを合成したりと、大学をでてから大分お世話になっている化合物です。いろんなところで話題になってますよね。今西先生、小比賀先生に配慮してBNAと併記するのが多いのですが、LNAと呼ぶのが一般化していると思います。

基本的には、完全に独立した研究で行なわれていたとされています。どちらが先に合成したのかは実験ノートを見ないと分かりません。論文発表は、今西先生の方が先でした。Tetrahedron Letters 1997 (Recieved 5/Sep., Accepted 3/Oct.)に掲載されています。小比賀先生が筆頭著者で、今西先生が責任著者でした。ウリジンとシチジンのDMTr体の合成と、結晶構造が出ています。ぼくの憶測ですが、この発表を見たWengel先生は急いでChemCommに投稿されたのだと思います (Recieved 28/Nov-97)。それからすぐフルペーパーを出しておられます。(Recieved 31/Dec-97)。デンマークは、国旗に十字架がありますし、クリスマスの休暇をしっかり取るお国がらなのに、それを返上してフルペーパーを投稿するくらい、必死で仕事をまとめたのではと思います。今西先生のほうはゆっくりしていて、次の4月にTmCDスペクトルのデータを出しておられます。結晶構造にしろ、CDスペクトルにしろ、合成したものの評価をしっかりやる印象がありますね。南デンマーク大にCDスペクトルを測定できる装置がきたのは、私がいたときでしたので研究設備は日本の大学の方がかなり恵まれています。

その後は、
Wengel研では、amino-LNA, thio-LNA, α-L-LNA, など
今西先生、小比賀先生は、ENA, BNACOC, BNANCなどなど
より高機能な誘導体が合成されてます。しかしながら、オリジナルのインパクトはすごいですよね。
個人的には、α-L-LNAも好きです。

LNA/BNAのシリーズは書くことがいっぱいあるのでまたの機会に。
2017.3.3 

2017年2月17日金曜日

はじめまして

大学卒業後トータル15年以上もChemistとして核酸に関わる研究をしてきましたが、少し離れることとなり、未練たっぷりにブログでも始めてみようと思い立ち書き始めます。
どうぞよろしくお願いいたします。 2017年2月17日